Rtn1がERの分裂を担う (Nature Communications 2019年11月22日号掲載論文)
結論から言うと、レティキュロン (reticulon) というタンパク質によってダイナミックなER膜の収縮と分裂が起きていることを示した論文。
本日は「Dynamic constriction and fission of endoplasmic reticulum membranes by reticulon (レティキュロンによる小胞体膜の動的収縮と分裂)」という論文で、イタリア Scientific Institute, IRCCS E. Medea, Laboratory of Molecular Biology の Andrea Daga のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2)
ERの大きさが、reticulonの分裂とatlastinによる融合のバランスによって動的に制御されている、という点が勉強になりました。
reticulonとatlastinは、それぞれ何によって活性を得たり失ったりするのでしょうかね。(例えば、ある生理的な条件でERが断片化する場合、reticulonが高い活性を持つようになる and/or atlastinの活性が失われる、という反応が起きているのでしょうか?)
興味を持たれた方はabstractもどうぞ。
The endoplasmic reticulum (ER) is a continuous cell-wide membrane network. Network formation has been associated with proteins producing membrane curvature and fusion, such as reticulons and atlastin. Regulated network fragmentation, occurring in different physiological contexts, is less understood. Here we find that the ER has an embedded fragmentation mechanism based upon the ability of reticulon to produce fission of elongating network branches. In Drosophila, Rtnl1-facilitated fission is counterbalanced by atlastin-driven fusion, with the prevalence of Rtnl1 leading to ER fragmentation. Ectopic expression of Drosophila reticulon in COS-7 cells reveals individual fission events in dynamic ER tubules. Consistently, in vitro analyses show that reticulon produces velocity-dependent constriction of lipid nanotubes leading to stochastic fission via a hemifission mechanism. Fission occurs at elongation rates and pulling force ranges intrinsic to the ER, thus suggesting a principle whereby the dynamic balance between fusion and fission controlling organelle morphology depends on membrane motility.
(私訳と勝手な注釈)
小胞体は、細胞全体の連続的な膜ネットワークである。小胞体ネットワークの形成には、膜の湾曲 (curvature) や融合を作り出すタンパク質、例えばレティキュロンやアトラスチンなどが関与しています。しかし、様々な生理的状況下で発生するネットワークの断片化については、あまり理解されていませんでした。ここでは、ERのネットワーク分岐 (elongating network branches) をレティキュロンによって分裂するメカニズムが存在することを発見した。ショウジョウバエを用いた実験では、Rtnl1が促進するER分裂は、アトラスチンによるER融合によって相殺され、Rtnl1の方が優勢になるとERの断片化が生じた。COS-7細胞にショウジョウバエのレティキュロンの異所性発現をすると、ダイナミックなER tubules における個々の分裂イベントが可視化された。そのことと一貫して、in vitroでの解析により、レティキュロンは脂質ナノチューブの速度依存性の収縮を生じ、ヘミフィッション機構を介して確率的な分裂を引き起こすことが示されている。ERが持つ伸長速度と引張り力の範囲でER分裂が起こる。(*最後のin vitro解析の結果は、光ピンセットを用いた引張力の測定や数式によるkeneticsのモデリング等があり、正直あまりフォローできていません。)このことから、膜の運動性に依存した融合と分裂のダイナミックな均衡状態がオルガネラの形態を制御するという原理が示唆された。
*1:このグループはショウジョウバエを用いてERやMicrotubulesのダイナミクスを研究しているラボのようです。atlastinというタンパク質がERの融合を担っていることを報告したのもこちらのラボからです。 --https://moh-it.pure.elsevier.com/en/persons/andrea-daga より