ER-エンドソームのコンタクトサイトで機能するタンパク質の、BioID法による同定 (Cell 2018年9月20日号掲載論文)

結論から言うと、BioID法(後述)により、ER-エンドソームのコンタクトサイトで機能するER膜タンパク質TMCC1を同定し、そのTMCC1がアクチン制御因子のCoronin依存的にエンドソームの分裂を制御していることを示した論文。

 

本日は「A Novel Class of ER Membrane Proteins Regulates ER-Associated Endosome Fission (新規ER膜タンパク質は、ER関連エンドソーム分裂を調節する)」という論文で、米国 Department of Molecular, Cellular, and Developmental Biology, University of Colorado-Boulder / HHMI の Dr. Gia K. Voeltz のグループによる研究。(論文サイトへのlink→*1

 

BioID(近位依存性ビオチン標識)という手法でMCS*2で働くタンパク質を同定した点に惹かれて選びました。

単にER-エンドソームのMCSに局在するタンパクを落としてきただけに留まらず、そのTMCC1がCoroninに制御されていることや、エンドソームにおける積荷を含む芽の部分を切り離すための分裂にTMCC1によるMCSが機能していることが示されています。

BioIDという手法については下記のサイトが英語ですが参考になります。

 

www.tebu-bio.com要するに、変異型のビオチンリガーゼを用いて、『[Baitとするタンパク質]の周辺(30nm以内)にあるタンパク質』のみをプルダウンする手法です。
(このtebu-bio's blogというサイトを初めて発見したのでチラっと見ましたが、様々な手法をかなり分かりやすい英語とイラストで説明している印象を受けたので、このサイトから日本語に訳したものをベースに色々な解説記事を書くのも良いかも、なんて思ったり。)

あと、僕が思っていたよりも、ERによるMCSの制御には細胞骨格(今回はアクチン)が関与していることが知れて興味深かったです。

 

興味を持たれた方はabstractもどうぞ。

Endoplasmic reticulum (ER) membrane contact sites (MCSs) mark positions where endosomes undergo fission for cargo sorting. To define the role of ER at this unique MCS, we targeted a promiscuous biotin ligase to cargo-sorting domains on endosome buds. This strategy identified the ER membrane protein TMCC1, a member of a conserved protein family. TMCC1 concentrates at the ER-endosome MCSs that are spatially and temporally linked to endosome fission. When TMCC1 is depleted, endosome morphology is normal, buds still form, but ER-associated bud fission and subsequent cargo sorting to the Golgi are impaired. We find that the endosome-localized actin regulator Coronin 1C is required for ER-associated fission of actin-dependent cargo-sorting domains. Coronin 1C is recruited to endosome buds independently of TMCC1, while TMCC1/ER recruitment requires Coronin 1C. This link between TMCC1 and Coronin 1C suggests that the timing of TMCC1-dependent ER recruitment is tightly regulated to occur after cargo has been properly sequestered into the bud.

(私訳と勝手な注釈) 

小胞体(ER)膜接触部位(MCS)は、エンドソームが積荷の選別の際に分裂する位置を標識します。このユニークなMCSでのERの役割を解析するために、ビオチンリガーゼをエンドソーム芽の積荷選別ドメインに標的化しました(BioID法)。この戦略により、保存されたタンパク質ファミリーのメンバーであるER膜タンパク質TMCC1が同定されました。 TMCC1は、ERエンドソームMCSにenrichしており、エンドソーム分裂と空間的および時間的なリンクが見られます。 TMCC1が枯渇すると、エンドソームの形態や芽の形成は正常ですが、ERに関連した芽の分裂とその後のゴルジへの貨物の選別が損なわれます。エンドソームに局在する、アクチン調節因子であるコロニン1Cは、アクチン依存性の積荷選別ドメインにおける、ER関連したエンドソーム分裂に必要でした。 TMCC1 / ERリクルートにはコロニン1Cが必要ですが、コロニン1CはTMCC1に依存せずにエンドソームの芽にリクルートされます。 TMCC1とコロニン1Cの間のリンクは、TMCC1に依存したERリクルートのタイミングが、積荷が芽に適切に隔離された後に起きるように厳密に規制されていることを示唆しています。