【学振対策】差がつきやすいポイントと学部生からでもできる準備

本記事では、学振DC申請書を見ていて内容に差がついたと思われるポイントを3つ挙げて分析し、差をつけるための準備について考察しています。

 

差がついたポイント

 

1. 研究計画の完成度、申請者の貢献度

研究計画の完成度は一番差が出ると思います。

学振や科研費の申請書は、特に「1ページ目」で全てが決まると言われています。

ⅰ. 最初に気にすべきなのは先行研究との差別化がクリアになっているかどうかです。上手い人の申請書は、先行研究と比較したときの研究計画の位置づけ、どこに独自性があるのかが分かりやすく書かれています。

例えば、分かっていない(or やられていない)ことがあります→だから私がやります、としか書かれていない研究計画はダメな例です。
読んでいてしっくりきやすいのは、

・重要な課題があります(分野外の人にも分かるように強調する)

・その課題についてはxxxのようなアプローチが取られてきました

・そこに新たな視点を持ち込みます

・分かっていなかった重要なことが分かります

という流れです。

 

ⅱ. 申請者自身が主体的に研究を進めているように見えるかどうかにも差がありました。ラボの強みが書かれているだけなのは低い評価になってしまうと思います。

 

【良い研究計画を書くための準備】

  • 綿密なフィードバックをもらえる環境づくり
    =グラント書くのが上手い人(過去の採択者やポスドク以上の科研費採択経験者)から綿密なフィードバックを受けられる環境に身を置く。
    申請書を良いものにするのに万能な方法などなく、ひたすらフィードバックをもらいながら、地道に改訂を繰り返していくしかないと思います。なので、そのようなフィードバックを受けられる場所に身を置くことが最重要だと考えます。
    ちなみに、大学院生くらいで文章書くときにおすすめの考え方が、苦しみながら遠回りして書いた方が申請書を書く力がつく、というものです。学振を書く過程で、文章作成能力が鍛えられるので、最初から完璧なものを書けると思わないほうが良いです。構成の大幅な変更やほぼ全部書き直しをくらっても、それまでの時間は無駄ではありません。学振は教育コンテンツだという心持ちで根気強くやりましょう。
  • 発展性、インパクトや意義が大きいテーマに着手できるラボを選ぶ。(学振採択常連ラボに入ってラボから強いテーマもらって学振取るのもひとつの戦略です)

  • 学振に集中できるようなラボを選び、準備は早めに始める
    提出前の2-3週間前までに予備データの取得や論文出版が完了していて、先生から頼み事をされることも少なく、学振申請書の大幅な改訂に耐える時間を作れるのがベスト。理想のタイムラインは、1ヶ月以上前に書き始めており、3-4週前に第一稿が書き終わっていること。

 


2. 予備データ、業績

予備データがあるかないかでも差がでます。これまでだれもやってこなかった何かしらを既に明らかにしていることで、申請者の研究遂行能力が推察できますし、研究計画の実行可能性も高そうだな、となります。

また、「着想に至った経緯」の部分で、申請者自身の予備データに基づいて着想したと書けば、ラボの強みだけではなく、申請者自身が計画の立案に貢献していることが伝わってきます。研究の独自性の担保にもなります。

また、当然ですが業績があった方が有利です。

 

【 業績、強い予備データをつむための準備】

  • 論文が書けそうなら何としてでも書く。(ハゲタカじゃなければIF低くてもOK)
    そうでないなら、学振で評価され得る業績は意外となんでもありなので頑張る。
    (学会・研究系国際大会 (iGEM等)などにおける発表や受賞、奨学金助成金などの採択経験)
    評価としては、やはりファーストオーサーの論文を持っていることが最も高評価に繋がりやすいと思います。
    個人の頑張りとラボ選びを含めた準備の早さが重要です。運要素あり。
    僕の場合は、学部2年からラボに行ってたのが有利に働きました。

  • (番外編)申請区分を工夫して選ぶ
    基本的に論文が出にくい分野の申請区分を選んだほうが有利です。
    (業績がそこまで強くない人の中で上位20%を狙う方が勝率が高い)
    過去の採択者をチェックしたり、指導教員や先輩に相談するなどして、出せそうな区分の中で一番有利な区分を選びましょう。
    ちなみに、申請区分を選ぶのは提出の直前ではなく、申請書を書き始める前が推奨です。申請書の構成を考える段階から申請区分の審査員にウケる内容を狙って書いた方が勝率が上がります。

 


3. 自己分析パートの独自性、研究との関連性

時間に余裕を持って準備ができている方は、ここではほとんど差がつかないと思います。強いて言うなら2点あります。

ⅰ. 申請者の強みやなりたい研究者像に申請者独自の経験が書かれているか、という点です。独自の経験が書いてあると、本当のことを書いているんだなと思えるので評価が高いです。

ⅱ. そのエピソードによってガンガン研究を進めて論文を書いてくれそうなことが伝わってくるか、という点です。これは、自身の強みが研究の遂行力につながるように書かれているかということです。
例えば、「英語力が高いです」「成績が良いです」としか書いていないのはダメな例です。「英語力が高いから、海外の研究者とも共同研究をやっていけるポテンシャルがあります(または、既にそのような実績があります)」、というところまで掘り下げて書くべきです。

 

【良い自己分析パートを書くための準備】

  • 時間に余裕を持って書く
    特に自己分析パートは色んな人から添削を受ければ短期間ですごく良くなることが多いです。添削のサイクルを回す時間が取れれば、独自性があって面白いものが書けると思います。
    具体的に経験を書くことと、研究に関連した客観的に評価可能な成果に結びつけるのがコツです。

 

 

以上3つの準備を踏まえて、
業績(特にファーストオーサーの論文)と強い予備データを取り、グラント書くのが上手い人(できれば直属の先生)から、丁寧な添削を受けれる環境に身を置くことができれば、きっと学振が取れることと思います!健闘を祈ります!

 


参考になりそうな文献
学振本は以下のスライドで代用可能
(学振本の中にはさらに過去の採択者の申請書が公開されている)
https://www.slideshare.net/tonets/gakushin23

学振本に加えて、こういう科研費の本も本格的で参考になる
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758121071/