ER 局在のp53 がCa2+に依存してアポトーシスを制御する (PNAS 2015年1月26日号掲載論文)

p53はERとミトコンドリアのコンタクトサイトに局在し、ER へのCa2+取り込みを促進する。Ca2+濃度が高くなったER は、MAM を通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される。以上の経路の存在が示唆された論文。


本日は「p53 at the endoplasmic reticulum regulates apoptosis in a Ca2+-dependent manner (小胞体のp53はCa2+依存的にアポトーシスを制御する)」という論文で、イタリア Department of Morphology, Surgery and Experimental Medicine, Section of Pathology, Oncology and Experimental Biology, University of Ferrara の Paolo Pinton のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2



背景       p53はミトコンドリアを介してアポトーシスを誘導することが知られていた。

課題       p53がどのようにしてアポトーシスを誘導するのか、詳細な分子機構の理解は完全ではない。

結果①   p53が小胞体とミトコンドリアのコンタクトサイト(MAM; mitochondria-associated membranesの略)に局在する。

結果②   p53が活性化するとER内へのCa2+取り込みが促進する。

結果③   ER上のp53はミトコンドリア内Ca2+濃度を上昇させ、アポトーシスを誘導する。

結果④   p53はER上のSARCA(ERにCa2+を取り込むポンプ)に直接結合して、SARCAの酸化還元状態を変化させる。

考察       以上の結果を合わせ、Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される、という経路の存在が示唆された。

結論       p53はERとミトコンドリアのコンタクトサイトに局在し、ERへのCa2+取り込みを促進する。Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される。以上の経路の存在が示唆された。

意見       p53は転写因子としてよく知られているが、核に移行せずともアポトーシス誘導することができるという報告だった。どこまで多機能なのか。 



The tumor suppressor p53 is a key protein in preventing cell transformation and tumor progression. Activated by a variety of stimuli, p53 regulates cell-cycle arrest and apoptosis. Along with its well-documented transcriptional control over cell-death programs within the nucleus, p53 exerts crucial although still poorly understood functions in the cytoplasm, directly modulating the apoptotic response at the mitochondrial level. Calcium (Ca2+) transfer between the endoplasmic reticulum (ER) and mitochondria represents a critical signal in the induction of apoptosis. However, the mechanism controlling this flux in response to stress stimuli remains largely unknown. Here we show that, in the cytoplasm, WT p53 localizes at the ER and at specialized contact domains between the ER and mitochondria (mitochondria-associated membranes). We demonstrate that, upon stress stimuli, WT p53 accumulates at these sites and modulates Ca2+ homeostasis. Mechanistically, upon activation, WT p53 directly binds to the sarco/ER Ca2+-ATPase (SERCA) pump at the ER, changing its oxidative state and thus leading to an increased Ca2+ load, followed by an enhanced transfer to mitochondria. The consequent mitochondrial Ca2+ overload causes in turn alterations in the morphology of this organelle and induction of apoptosis. Pharmacological inactivation of WT p53 or naturally occurring p53 missense mutants inhibits SERCA pump activity at the ER, leading to a reduction of the Ca2+ signaling from the ER to mitochondria. These findings define a critical nonnuclear function of p53 in regulating Ca2+ signal-dependent apoptosis.


腫瘍抑制因子p53は、細胞の癌化や腫瘍の進行を抑制するための重要なタンパク質です。様々な刺激によって活性化されたp53は、細胞周期停止とアポトーシスを制御する。核内での細胞死プログラムを制御する転写制御に加えて、p53は細胞質においても重要な機能を発揮し、ミトコンドリアレベルでのアポトーシス応答を直接調節していますが、その機構はまだ十分に理解されていません。小胞体とミトコンドリア間のカルシウム(Ca2+)移動は、アポトーシスの誘導において重要なシグナルである。しかし、ストレス刺激に応答してこのフラックスを制御するメカニズムはほとんど不明である。本研究では、WT p53が細胞質において、小胞体とミトコンドリアの間の特殊な接触領域(ミトコンドリア関連膜)に局在することを示した。本研究では、WT p53がストレス刺激を受けると、これらの部位に蓄積し、Ca2+の恒常性を調節することを明らかにした。また、WT p53は活性化されると、ERのサルコ/ER Ca2+-ATPase(SERCA)ポンプに直接結合し、その酸化状態を変化させてCa2+負荷を増加させ、その後ミトコンドリアへの移行を促進することを明らかにした。その結果、ミトコンドリアのCa2+負荷が増加し、ミトコンドリアの形態が変化し、アポトーシスが誘導された。WT p53または天然に存在するp53ミスセンス変異体を薬理学的に不活性化すると、ERでのSERCAポンプ活性が阻害され、ERからミトコンドリアへのCa2+シグナル伝達が低下することがわかった。これらの知見は、Ca2+シグナルに依存したアポトーシスの制御において、p53の非核機能が重要な役割を果たしていることを示している。

*1:このグループはCa2+のダイナミクスを分子細胞レベルで研究しているラボのようです。 --The laboratory has developed avouched competences in the studying of calcium (Ca2+) homeostasis, in particular using recombinant proteins such as the Ca2+-sensitive photoprotein aequorins, the mutants of Green Fluorescent Protein (GFP) and different chemical probes. Moreover, we operate as center for cell imaging with particular interest in mitochondrial and Protein Kinase C (PKC) imaging. Finally, the group is involved in the study of adipocytes differentiation of stem cells population derived from different adult tissues. --より。