ERの形を決めるタンパク質がミトコン分裂も制御する (BioRxiv 2018年掲載プレプリント)

結論から言うと、アポトーシスタンパク質であるBCL-2の阻害剤によるがん細胞の死滅には、ミトコンドリアの断片化が必要で、このプロセスはERタンパク質のKDによってキャンセルされるということを示したプレプリント

 

本日は ER shaping proteins regulate mitochondrial fission, outer membrane permeabilization and apoptosis という論文で、イギリス Departments of Molecular and Clinical Cancer Medicine, University of Liverpool の Dr. Shankar Varadarajan のグループ。(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

 

 構造に分けて解説。

背景       がん細胞にアポトーシスを誘導させるというのが、抗がん剤の簡単なロジックだが、がん細胞は抗アポトーシスタンパクを高発現させることでこれに対抗している。そこでこの抗アポトーシスタンパク質(例えばBCL-2, BCL-XL, MCL-1)の阻害剤(それぞれABT-199, A-1331852, A-1210477,本文中ではまとめて BH3 mimeticsと呼ばれている)を用いた臨床試験が進んでいる状況である。

課題       BH3 mimetics はミトコンドリアからのシトクロムCを放出させアポトーシスを誘導することが知られているが、より詳細な分子機構はわかっていなかった。

結果①   BH3 mimeticsによるCyt C放出やアポトーシスにはミトコンドリア分裂を促進するタンパク質Drp1が必要である。ERタンパク質のKDでCyt C放出とアポトーシスは部分的にキャンセルされる。

結果②   ERタンパク質のKDでBH3 mimeticsによるミトコンドリアの断片化がキャンセルされる。
解釈:BH3 mimeticsによるミトコン断片化にはER局在タンパク質が必要。
補足:OPA1のKDによる通常のミトコン融合阻害には、ER局在タンパク質のKDは拮抗しない。なので、ERは恐らくミトコンドリア断片化の分子機構に何らかの関与がある。

結果③   ER局在タンパク質をKDしても、Drp1はミトコンと共局在したままである。

考察       Drp1の共局在だけでなく、Drp1のミトコンドリアへの滞在時間やDrp1のリン酸化状態をモニターすれば、何が効いているのか手がかりが得られるかもしれない。

ミトコンドリアの分裂にはERとのコンタクトが大事、という論文もあるので、ミトコンドリア分裂のプロセスにおいてERとの間で何か起きているのでしょう。Drp1のリン酸化かなぁ。

*1:このグループはアポトーシス制御におけるBCL-2の役割やERとミトコンドリアの膜動態のアポトーシスにおける役割などを研究しているラボのようです。こちらのlinkより。

*2:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/340448v1.full