CTLやNK cellは脂質構成を変化させてperforinによる膜損傷を回避する (Nature communications 2019年11月27日号掲載論文)

結論から言うと、CTLやNK cellは脂質の流動性を下げることでperforinの膜への干渉を防ぎ、PSを露出させることでperforinを不活化していることを示した論文。

 

本日は Lipid order and charge protect killer T cells from accidental death. という論文で、オーストラリア Killer Cell Biology Laboratory, Peter MacCallum Cancer Centre の Dr. Ilia Voskoboinik のグループ。(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

 

f:id:k_sudachi:20200603112226p:plain

この論文のコンセプトの図。元論文のFig. 8より引用です。

 構造に分けて解説。

背景 CTLやNK cellが細胞を殺すとき、pore-forming protien (perforin)やアポトーシスを促進するセリンプロテアーゼのgranzymeを分泌する。このときCTLやNK cellは、殺したい標的細胞と免疫学的なシナプスを形成する。

課題 CTLやNK cellは標的細胞と同様にperforinにさらされているはずだが、なぜCTLやNK cell自身はperforinによって膜損傷を受けないのだろうか。細胞膜の脂質構成に着目してこの謎に迫る研究は今までもあったが結論が出ていない。

結果① perforinは、Ca2+に依存してCTLよりも標的細胞によく結合する

結果② CTLの細胞膜のコレステロールを7-ケト-コレステロール(7-KC)に置換して膜の流動性を上げると、perforinによる膜損傷を受けやすくなる。

結果③ in vitroのリポソームの系で、PC(ホスファチジルコリン)の膜ではperforinによって穴が形成されるが、PS(ホスファチジルセリン)の膜ではうまく穴が形成されない。

考察 CTLやNK cell以外にも、何らかの状態の標的細胞が、このような脂質変化によりperforinによるキラー細胞からの攻撃を回避している可能性がある。

結論 脂質の流動性を下げることでperforinの膜への干渉を防ぎ、PSを露出させることでperforinを不活化している。

膜の流動性が下がることによって、perforinが刺さりにくいという話はわかるが、CTLが他の細胞よりも膜の流動性が低いというエビデンスが足りない気がする(先行研究であるのかも)。PSが負電荷を帯びてperforinを不活化するという話は、具体的にperforinのどこに効いているのかまだ不明だと思う。Ca2+あるいはperforinの中の正電荷を帯びているドメイン(もしあれば)が、PSの負電荷と相互作用することで構造が変化してしまい、上手くオリゴマー化ができなるなる、といった具合でしょうか。現在のところ、どのような分子がこの脂質の変化を誘導しているのかは不明。また、PSはアポトーシス細胞でも細胞表面に露出され、マクロファージによる貪食の引き金になる。CTLはマクロファージによる貪食はどのように回避しているのだろうか。

*1:このグループは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)とナチュラルキラー(NK)細胞の制御と機能を研究しているラボのようです。こちらのlinkより。

*2:https://www.nature.com/articles/s41467-019-13385-x