ERの形態変化を誘導すると、ミトコンドリア分裂やアポトーシスの誘導が阻害される (Cell Death & Disease 2019年7月8日号掲載論文)

結論から言うと、apogossypol という薬剤によりERに凝集様の形態変化を誘導すると、ミトコンドリア分裂やアポトーシスの誘導が一部阻害される、ということを示した論文。

 

本日は「Apogossypol-mediated reorganisation of the endoplasmic reticulum antagonises mitochondrial fission and apoptosis (Apogossypolを介した小胞体の再編成がミトコンドリアの分裂とアポトーシスを抑制する)」という論文で、イギリス Departments of Molecular and Clinical Cancer Medicine, University of Liverpool の Dr. Shankar Varadarajan のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

  

 構造に分けて解説。

背景      ERは、高曲率の細管と平板状のシートからなる精巧なネットワークを持ち、ミトコンドリア、ペルオキシソームなどの他の細胞小器官とコンタクトして、それらの膜のダイナミクスと機能に重要な役割を果たしている。先行研究において著者らは、可逆的にERの形態を変化させる複数の化合物を同定しており、apogossypolはその内の1つである。

方法      apogossypolを用いて、ERの膜の形態変化に対する影響を調べた。

結果①  apogossypolにより、ER膜の内、tube状ERが影響を受け、sheet状ERは影響を受けない。

結果②  apogossypolによるER膜構造の変化は、Drp1を介したミトコンドリアの分裂をある程度阻害する。

結果③  apogossypolによるER膜構造の変化を誘導後、アポトーシス刺激を加えても、アポトーシスを起きない。このときDRP-1は再編成された小胞体膜に局在するが(本文のfig.3参照)、BAXの転座と活性化(本文のfig.3参照)、シトクロムcの放出とホスファチジルセリンの露出は阻害されていた。

ERの形態がミトコンドリアの分裂活性を一部阻害し、それが下流アポトーシスにまで影響を与えるという点が面白いと思いました。この研究で用いられたapogossypolはERのアグリゲーションのようなものを引き起こしていますが、そのようなERの形態が、どの程度の生理的なストレスによって誘導され得るのかは疑問が残ります。

*1:このグループはアポトーシス制御におけるBCL-2の役割やERとミトコンドリアの膜動態のアポトーシスにおける役割などを研究しているラボのようです。https://www.liverpool.ac.uk/translational-medicine/staff/shankar-varadarajan/より。

*2:https://www.nature.com/articles/s41419-019-1759-y