DNA 損傷により滑面小胞体が増加, ER-mito 間MCS の形成強化, アポトーシスにつながる (Cell Research 2018年7月20日号掲載論文)

結論から言うと、
DNA 損傷によりp53 が活性化すると、REEP1/2 の発現上昇による滑面小胞体の増加、EI24 の発現上昇によるER-ミトコンドリア間MCS の形成促進が誘導される。その結果ER からミトコンドリアへのCa2+移動が促進されアポトーシスが誘導される、ということを示した論文。

 

本日は「DNA damage triggers tubular endoplasmic reticulum extension to promote apoptosis by facilitating ER-mitochondria signaling (DNA損傷は滑面小胞体の伸長を誘発し、ER-ミトコンドリアシグナル伝達を促進してアポトーシスを促進する。)」という論文で、中国 Key Laboratory of Cell Proliferation and Differentiation of the Ministry of Education, State Key Laboratory of Membrane Biology, College of Life Sciences, Peking University(北京大学) の Jianguo Chen のグループによる研究。(論文サイトへのlink→*1

  

 ちょっと構造に分けて説明していきます。

背景       p53はミトコンドリアを介してアポトーシスを誘導することが知られていた。

課題       p53がどのようにしてアポトーシスを誘導するのか、詳細な分子機構の理解は完全ではない。

結果①   p53が小胞体とミトコンドリアのコンタクトサイト(MAM; mitochondria-associated membranesの略)に局在する。

結果②   p53が活性化するとER内へのCa2+取り込みが促進する。

結果③   ER上のp53はミトコンドリア内Ca2+濃度を上昇させ、アポトーシスを誘導する。

結果④   p53はER上のSARCA(ERにCa2+を取り込むポンプ)に直接結合して、SARCAの酸化還元状態を変化させる。

考察       以上の結果を合わせ、Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される、という経路の存在が示唆された。

結論       p53はERとミトコンドリアのコンタクトサイトに局在し、ERへのCa2+取り込みを促進する。Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される。以上の経路の存在が示唆された。

意見       p53は転写因子としてよく知られているが、核に移行せずともアポトーシス誘導することができるという報告だった。どこまで多機能なのか。