多細胞生物における、ミトコンドリア-ERを繋留するタンパク質の同定 (Science 2017年11月3日号掲載論文)

結論から言うと、酵母ERMES複合体のMMM1に対する機能ホモログとしてPDZD8を同定した上で、FIB-SEM法を用いてミトコンドリアとERのcontactを定量的に解析し、PDZD8がミトコンドリアとERのcontact及び、Caイオンのダイナミクス(ER→mitoへのCa流入)に必要であることを示した論文。

  

本日は「ER-mitochondria tethering by PDZD8 regulates Ca2+ dynamics in mammalian neurons (PDZD8によるER-ミトコンドリアテザリングは、哺乳類ニューロンのCa2+ダイナミクスを調節する)」という論文で、米国 Columbia大学 Medical Center,Department of Neuroscience Dr. Franck Polleuxのグループによる研究(ファーストの平林 祐介先生は現在東京大学)。(論文サイトへのlink→*1

 

新着論文Reviewへのlink:

first.lifesciencedb.jp

 

この研究では、ERとミトコンドリアの繋留(ER-mitoのMCS)に必要なタンパク質としてPDZD8を同定しており、PDZD8のノックダウンでER-mitoのMCSが減少し、それに伴ってERからmitoに送られるCaイオンが減少することが示されています。これに応答してCytosolのCa濃度が上昇することから、恐らくERからmitoに送り損ねたCaが、Cytosolに流れ出てしまっているという解釈がされています。

画像及び動画のデータがとても美しいです。特にミトコンドリアとERの接触しているところの動画を見たときの「おおお!」っていう感じはいつ見てもいいですね(語彙力)。教科書でよく見る、ERと独立して泳いでいるミトコンドリアという絵が、ステレオタイプになった瞬間です。FIB-SEM使ってみたいですね。

個人的には、CaがCytosolに流れ出てしまっても、ミトコンドリアには即座に取り込まれないという結果が意外でした。少しくらい離れてしまっても取り込みそうなものですが、CytosolのCa濃度が上昇しても、ミトコンドリアのCaは増加しません。ERとのMCSからのCaは取り込むが、Cytosolに拡散されたCaは取り込まない。つまり、ミトコンドリアへのCa取り込みは、「どこ由来のCaイオンかで厳密に制御されている」、または、「Cytosolで一度拡散してしまうとCa結合タンパク質などに捉えられるため、Caがミトコンドリアまでたどり着かない」、などが考えられますね。

 

新着論文レビューのリンク先が十分わかりやすいので、今日はabstractの全訳なしです。