勝手に改訂版:落合陽一の論文を爆速で読むフォーマット

<目次>

 

こんな方に向けて書いた記事です

いやあ論文が読めない。読まないといけないことはわかっているけれども読めない。そんな大学生が書いた記事です。「僕のような論文を読むのに慣れない学部生」や、「実験に忙しくて、ここだけの話、論文を読むことが習慣化していない、、なんていう院生」の方には参考になると思います。結論から言うと、論文が読めなかった学部生の僕が一ヶ月に25本くらいのペースで、ほぼ毎日論文を読んで得たことをアウトプットすることに成功しました。

論文を読んでいても意味不明すぎて、シュレッダーにかけたくなる気持ち、すごくわかります。この記事を読んだ人が少しでも論文が読めるようになれば幸いです。

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落合陽一の論文を爆速で読むフォーマットとは??

落合陽一先生が提案されている、論文を爆速で読むフォーマットというのをご存知でしょうか。

このブログでも1度触れましたが、以下の記事で僕は知りました。

lafrenze.hatenablog.com

そして実際に試してみたところ、正直に言うと続きませんでした。

 

どうしてこの素晴らしいフォーマットを活用できないのか?

問題があるとすれば次のどれかに当てはまっていた気がします。

  1. ある特定の情報が知りたいというモチベーションで論文を読んでいて、その情報が手に入った時点でフォーマットの項目を埋める気にならない。

  2. どうせ自分が参考にするだけなので、埋まらない項目があっても諦めがちになる or 適当に項目を埋めてしまう。*1

  3. そもそもこのフォーマットは落合陽一先生がよく読まれる分野の論文を読むことに最適化されているため、別の分野に流用した場合、埋まらない項目の出現確率が高い。*2

  4. 原因が何にせよ、埋まらない項目ができてくると、このフォーマットにまとめる意義がわからなくなり、いちいちスライドを作製するのが煩わしくなり、一気に続けるモチベーションがなくなる。*3

 

僕が考えた勝手に改訂版

そこで、この素晴らしいはずのフォーマットを使いこなせない現状をどうにかすべく、勝手に改訂してみました。具体的にどのように改定したのかは以下の通りです。

  1. アウトプットの方法を「パワーポイントスライドでフォーマットを作製する」から→「ブログにアブストラクトの全訳をベースにした論文の解説記事を書く」に変更。

  2. フォーマットの各項目を埋めることにこだわらず、自分で設定した問いを意識して記事を作成。具体的には、以下の項目を意識しています。(意識しているだけで、必ず記事に盛り込まなくても良いというルールにしています。)

    ・要するに??(何をどうやって検証したのかを短く。)
    何が新規性として強調されている??

    ・技術・手法・アイデアなどで、すごいと思った点。
    ・この論文の限界として感じたことがあれば。
    ・Discussionで興味深い仮説や解釈があれば。
    ・この論文を読んでさらに知りたいと思ったこと。

  3. アウトプットの最低ラインを2段階に分けて設定。
    段階1:論文を1日1本読んで、少なくともアブストラクトの全訳をブログにアップロードする。
    段階2:保険として、論文に関係なくても良いので、新しいブログ記事を1日1本はアップロードする。

  4. マルチタスク禁止令の敢行。まずは1日1本という目標を達成するために、眼の前の論文の理解に集中する。論文を読んでいて、気になったことがあった場合はもちろん調べるが、論文の内容を理解する以上の知識を得ようとした段階で、5分のタイマーをスタートさせ、5分以内に論文の解説を書く本来の作業に戻る。

 

それぞれの改訂のねらいは以下の通り。

  1. ブログにアブストラクトの全訳をベースにした論文の解説記事を書くということは、基本的にはgoogle翻訳に突っ込んで日本語的におかしなところを直していけば終わります。まず、続けるためにハードルが低いので効果的です。

    そんなことして意味あるの?と感じますが、かなり英語が読める方や論文を読んでいる人じゃない限り、英語のまま流し読みすると理解したつもりが理解できていない、という状況になっています。英語で斜め読みをしようとするとそうなります。そういう訳で、最新の論文アブストを日本語に直すだけでもわりと意義があります。

    とは言うものの、アブスト訳すのは単なる取っ掛かりであり、これだけでは論文を読んだことにならない (訳がわからない) 場合がほとんどなので、2で立てた問に答えることを念頭に置きつつ、自分がわからないところや、論理的に飛躍していると感じたところを論文のメインのページを参照しながら潰していくという手順をとります。

    そして、パワポからブログという変更により、誰かが読むかもしれないと思って記事を書くことができ、適当な記述が減るため自分の理解度も向上します。ちなみに僕の論文解説の記事のフォーマットは恐縮ですが論文ウォッチ | AASJホームページのものを丸パクリさせていただいています。このように参考になるwebページが多いのも、ハードルを下げて論文読みを習慣化するためのポイントです。一方で、そうは言ってもわざわざブログを立ち上げるのがダルいという方は、論文ナビというプラットフォームを活用するのがオススメです。僕もブログの記事からいくつかアップしてみましたが、ユーザーインターフェースが洗練されていてなかなか使いやすいですよ。

    また、落合先生のフォーマットは筑波大学の授業で用いられていたもので、単位を取るためにまとめないといけない、というプレッシャーが生徒のモチベーションにつながっています。僕のように自主的に論文を読む場合、誰かに解説記事を書くという目的を追加することでモチベーションを保ちやすくしています。


  2. そもそも論文が爆速で読めるフォーマットは落合陽一先生がよく読まれる分野の論文を読むことに最適化されていたので、自分が読むような生命科学・医学系論文に沿った問いを立てながら読む、ということを心がけました。


  3. アウトプットを2段階に分けたというのは、単にどうしても論文を読むのがつらい日があるので、プランBを用意しておいたという訳です。僕は新しい論文を読む代わりに、ややこしくて苦手な用語の整理や、明日読むと決めた論文の予告などでつなぎました。「続けられなかった→モチベーション低下」という流れを回避するためのものです。何事も毎日続けるというのは難しいことで、個人個人でそれに対する対策を練っておくことが重要です。


  4. これは最近になって気づいたことですが、マルチタスク禁止令というのが、現状とても効果的に作用しています。これは論文を読むこと以外の作業中でも効果的です。論文を選んでアブストを全訳するという行為自体は、どんなにわからない単語が多くても集中していれば1-2時間程度で終わるはずです。

    しかし論文を読んでいると、、、
    「あ、この仮説が本当なら自分の実験にあの手法組み込めるな~」

    「あ、そういえば自分の使ってるモデル生物であの手法やるにはどうしたら良いんだっけ。」

    「ていうか今日の晩ごはんどうしよう。」

    「暇やしtwitterみよ。」→「あれ、おれ今何してたんだっけ。」

    という状態によくなりませんか??


    僕は頻繁になりますよ!!

    とにかく締切が直前になったりしないと、現状の目の前のタスクに集中できないんですよね。それなら自分で締め切りを設定しようという訳です。*4もちろん疑問に思ったことを追求して調べていくことは良いことで、それによって新たな知識が得られることは多いです。しかし上記の例からわかるように、1つ気になったことをその都度納得するまで調べることは、色々なタスクを中途半端に終えることにつながったり、そもそも最初に行っていた作業を中断するので効率がよろしくないです。例えば論文を読んでいて (論文を理解するのに直接は関係しないけども) 気になったことがあった場合。それをググって、5分以内に「疑問に思ったこと専用のブックマークフォルダ」に入れておく。暇なときや時間ができたときにそれについて調べる。というワークフローがとてもバランスが良いと感じています。

 

結論

何が1番効果的だったかと振り返ると、他人が作ったフォーマットを鵜呑みにせずに、自分で試行錯誤を重ねて改訂を繰り返した点だと感じています。論文を読むために必要な能力はいくつかあると思いますが、どのパラメーターが足りていないのかは人それぞれです。落合先生が作ったフォーマットは完成度が高く素晴らしいと思いますが、自分なりに最適化して運用してこそ本当に強い効果を発揮するという、何とも当たり前の結論に至ってしまいました。

 

ちなみに、論文を読むために必要な能力についてはこちらの記事が面白かったです。

karino2.github.io

それではこのへんで、みなさま充実した論文ライフを!

*1:これらの1と2は、このフォーマットを授業の課題で作成して提出しないといけいないというプレッシャーがあれば上手く避けられると思います。

*2:こちらの記事でも文系の論文を読むときにそのまま使いづらかったと書かれています。長文読めない系人間が落合先生の「論文の読み方」を実践してみた - 東大推薦生の転落人生「これから頑張ります」

*3:僕のような完璧な状態にこだわってしまう気質の人は特にそういう傾向が強いと思います。

*4:これはストップウォッチ勉強法というもので、僕も存在自体は知っていたし試してみたこともありました。しかし、例えば「論文1本を60分で読む」のようなストップウォッチの設定をしていたので、40分だらだら読んでしまい、残りの20分で本気を出すもの満足の行く作業ができず、、、という訳で上手く行かなかったのです。これをマルチタスク防止に応用することがかなり効果的だと感じています。