今日は論文1本を読むというよりも、突然変異が疾患を引き起こすメカニズムについて調べていたので、それについてまとめたい。
まず前提として、突然変異を2つの側面から整理する。(ややこしいので1つの塩基が影響を受ける場合に限った話にする。数十塩基の欠失や挿入、遺伝子重複や染色体転座については扱わない。)
- DNAがどのように影響を受けるか。
・ポイントミューテーション:いわゆる置換によって、塩基が置き換わる。
・フレームシフト:挿入や欠損によって、塩基がずれていく。 - 合成されるタンパク質がどのように影響を受けるか。
・ナンセンス変異:途中で終始コドンが入ってしまうような変異。
・ミスセンス変異:アミノ酸の置換はあるものの、ナンセンス変異ではないもの。*1
そして今回まとめたいのは、遺伝性疾患でよく見られる、ポイントミューテーションによるミスセンス変異が起きた場合に、なぜ悪い影響が出るのか (疾患になるのか) ということである。
- 常染色体優性 (顕性) 遺伝を示す疾患の場合。*2
・dominant positive:Gain of (toxicじゃない)functionということ。変異により生化学的活性が高まる(たとえば、ras)。発癌などにも多く見られる。
・dominant negative*3:変異によってコードされたタンパク質が、正常なものよりも優位に働くことで、形質として、機能を失ったように見えること。例えば、いくつかのサブユニットが集まってひとつの機能単位を作るとき、変異蛋白があると、機能的な単位が作れない場合など。
・ハプロ不全 (loss of function):上記の逆で機能が失われてしまうこと。接合体のもつ一対の遺伝子のうちの1つに突然変異が起こっても、ほとんどの遺伝子では残った野生型遺伝子からつくられるタンパク質で不足分をまかなえるが、野生型遺伝子1つ(ハプロイド)からつくられるタンパク質では量が不足した結果、形質として影響が現れた場合、ハプロ不全という。
・Gain of toxic function:毒性のある機能を獲得してしまうこと。以下に例を少し。
a. 異常を増幅するようなフィードバック機構を活性化させてしまう。
b. 異常なタンパク質が蓄積し、凝集体などを形成することで毒性を与える。
c. 上記の dominant negative - 常染色体劣性 (潜性) 遺伝を示す疾患の場合
・loss of function:基本的にはこのタイプ。対立遺伝子の両方に機能を失うような突然変異がおきてしまうことで、異常な形質を示す。(厳密には完全な機能喪失であったり、部分的な機能低下であったりする。)
上記の組み合わせで疾患を発症するという例も勿論あるため、 疾患の研究とは極めて複雑であるということが改めてわかった。
この記事は以下のサイトを参考に作製した。
http://www.medic.mie-u.ac.jp/meduc/text/yoshida-hereditary.doc