CMT原因遺伝子としてのKIF1Bβとその積荷の同定(Journal of Cell Biology2018年8月20日号掲載論文)

今回abstractを全訳するのは、Journal of Cell Biology2018年8月20日号に掲載された「KIF1Bβ mutations detected in hereditary neuropathy impair IGF1R transport and axon growth.(遺伝性ニューロパチーにみられるKIF1Bβの突然変異がIGF1Rの輸送と軸索伸長を障害する。)」という論文。

東京大学分子細胞生物学研究所の廣川信隆教授のラボからのお仕事。

以下私訳と勝手な注釈。

KIF1Bβは、神経の発達、生存能力、および機能に必須のキネシン3ファミリー順向性モータータンパク質である。KIF1Bβ突然変異は、Charcot-Marie-Tooth病タイプ2A(CMT2A)の限られた家系において以前に報告されている。しかしながら、CMT2Aの責任遺伝子については依然として議論の余地があり、その分子病態はまだ明らかになっていない。この論文では、受容体チロシンキナーゼIGF1RがKIF1Bβの直接結合因子であることを新規に発見し、その結合および輸送は、著者らが遺伝性神経障害患者において同定したKIF1BβのY1087C突然変異によって特異的に損なわれることが示された。Kif1b-/-において、神経の軸索伸長およびIGF-Iシグナル伝達は有意に損なわれ、表面IGF1R発現も減少した。これらのKif1b-/-マウスの表現型をKIF1Bβ-Y1087Cで相補することはできなかった。一方で、シナプス小胞前駆体への結合能力は影響を受けていなかった。これらのデータは、IGF1R輸送におけるKIF1Bβとのつながりが、神経障害の病因に新たな手がかりを与えるだろうということを示している。

 

要するに、KIF1BβがCMT2Aの原因遺伝子として提案され、その分子病態としてKIF1BβとIGF1Rの結合と輸送が障害されているということが示されている。

IGF1RをKIF1Bβの積荷として新規に同定したのが目玉かな。

著者らが新たに同定したCMT2Aの家系では、MFN2とその30以上の関連遺伝子は無傷だったらしい。MFN2に突然変異がないのに、じゃあどうやってCMT2Aと定義したのだろうか。