今回abstractを全訳するのは、2017年9月6日Nature Communicationsオンラインに掲載された「Promoting Drp1-mediated mitochondrial fission in midlife prolongs healthy lifespan of Drosophila melanogaster.(中年期にDrp1を介してミトコンドリアの分裂を促進させることで、ショウジョウバエの健康寿命が伸びる。)」という論文。
米国UCLA, Department of Integrative Biology and PhysiologyのDr. David W. Walkerラボからのお仕事。
以下私訳と勝手な注釈。
機能不全のミトコンドリアの蓄積は老化に関係しているが、その分子メカニズムを知るためには、老化中におけるミトコンドリアダイナミクスおよびマイトファジーについてのより深い理解が必要である。本研究では、ミトコンドリア分裂を促進するDrp1(Dynamin-related protein)が中年期にアップレギュレートされ、ショウジョウバエの寿命と健康状態(health span)が延長することを示している。中年期におけるDrp1の短期間の過剰発現が、健康を改善し、寿命を延ばすのに十分であることを見出した上に、老化したハエの飛行筋において機能不全のミトコンドリアが蓄積してしまうことと相関して、ミトコンドリアが中年期にかけて伸長することを発見した。中年期におけるDrp1を介したミトコンドリア分裂の促進は、マイトファジーを亢進させ、ミトコンドリアの呼吸機能と老化したハエのプロテオスタシス*1の両方を改善する。最後に、中年期におけるDrp1を介したミトコンドリア分裂の老化防止にはオートファジーが必須であることを示した。これらの知見は、ミトコンドリア分裂を中年期に促進させることで、哺乳類においても病気の発症や死亡を遅らせる可能性があることを示している。
要するに、中年のハエではミトコンドリアが伸長してしまっているので、ミトコンドリア分裂促進因子であるDrp1を発現させれば、それが治ってうまいこといったよ、という論文。
ミトコンドリアが伸長してしまっていることが悪い、というと、ミトコンドリアが大きいことが問題なのか、ミトコンドリアが分裂抑制されていることが問題なのかわからない。どちらがマイトファジーの機能低下の鍵になるのか?
次回はそんな疑問について答えるような論文を紹介したい。
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