アポトーシスの直前、小胞体のCa2+量枯渇に依存してCRTが細胞膜表面にさらされる (Cell Death & Differentiation 2007年11月23日号掲載論文)

結論から言うと、アポトーシスの直前、小胞体のCa2+量枯渇に依存してカルレティキュリンという小胞体タンパク質が細胞膜表面にさらされることを示した論文。

 

本日は「Reduction of endoplasmic reticulum Ca2+ levels favors plasma membrane surface exposure of calreticulin (小胞体Ca2+レベルの低下はカルレティキュリンの膜表面露出を促進する)」という論文で、フランス Centre de Recherche des Cordeliers の Dr. G Kroemer のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

  

 構造に分けて解説。

背景       化学物質の投与でがん細胞にアポトーシスを誘導することはがん治療に有益。これまでにアントラサイクリンが細胞死を誘導することが知られていた。

課題       アントラサイクリンによるアポトーシスの前に、カルレティキュリン(CRT)というタンパク質が細胞膜表面に曝されることが知られていたが、その意義に関しては不明である。

目的       CRTの細胞膜へのexposureとCa2+ホメオスタシスの関係を調査する。

方法       神経芽腫細胞株(SH-SY5Y)において、SERCAの阻害やReticulon1Cの過剰発現によりER内腔Ca2+濃度を低下させ、アントラサイクリン投与の影響を見る。

結果①   SH-SY5Yは、アントラサイクリン投与でもCRT exposureが誘導されないが、Reticulon1Cの過剰発現と組み合わせるとCRT exposureが起きる。

結果②   brefeldin Aにより小胞体からゴルジ複合体へのタンパク質輸送阻害を行うと、CRT exposureがキャンセルされる。

結果③   Reticulon1Cの過剰発現によりER内腔Ca2+濃度が低下している。

結果④   細胞内(および小胞体)Ca2+のキレート、IP3受容体のリガンド結合部位の発現、およびSERCAポンプの阻害は、SH-SY5YおよびHeLa細胞において、小胞体Ca2+濃度を減少させ、細胞表面でのアポトーシス前CRT曝露を促進した。

解釈       アポトーシス前のCRT曝露は、ERのCa2+枯渇によって誘導される。

 

最近出た論文では、細胞膜表面のCRTをマクロファージが死細胞の目印として認識しているという報告がある(このブログで以前取り上げました↓)

sudachi.hateblo.jp

アポトーシスの前にCRTを出すのは、恐らくアポトーシスの後だと細胞が死んでいるのでCRTを出せないのだろう。しかし、ERのカルシウム量を感知してCRTを提示するという仕組みだと、アポトーシスしていない細胞でもERのカルシウムが枯渇するとCRTを提示してしまうので、他にも制御する仕組みがありそう。

*1:このグループは内的および外的ストレスに対する細胞の応答を、細胞死などの観点から研究しているラボのようです。http://www.kroemerlab.com/index.php/science/researchより。

*2:https://www.nature.com/articles/s41422-018-0065-z

KClによる刺激で神経のERが断片化 (Journal of neuroscience research 2011年5月2日号掲載論文)

結論から言うと、脳海馬スライスの神経では、KCl刺激によるCa2+流入よって、ERが断片化することを示した論文。

 

本日は「Potassium-induced structural changes of the endoplasmic reticulum in pyramidal neurons in murine organotypic hippocampal slices. (マウス海馬のスライスにおける錐体ニューロン内ERのKCl刺激による構造変化。)」という論文で、スウェーデン Laboratory for Experimental Brain Research, Department of Clinical Sciences Lund, Lund University の Håkan Toresson のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

  

 ちょっと構造に分けて説明していきます。

背景       ERの構造は、細胞内における同化、ストレス応答、シグナル伝達等の調節に重要な役割を果たしている。ERは一般的に連続的な構造をしているが、一時的に構造変化を起こして断片化した状態になることがある。

課題       ERの断片化の発生機序、生物学的意義に関しては詳しく分かっていない。

方法       ERを標的とした蛍光タンパク質を発現させた脳の海馬スライスに対して、過度に神経脱分極を誘導するレベルのKCl刺激(50mM)を加えることで、ERの断片化を誘導し、断片化の機構を調査した。

結果①   KCl刺激はERの断片化を誘導する。K+が基底濃度(2.5mM)に戻るとERは融合して元の構造に戻る。この融合・分裂の過程は何度も繰り返し誘導することができる。

結果②   Ca2+取り込みチャネルであるNMDA-Rの阻害や細胞外Ca2+の除去でERの断片化はキャンセルされる。

結果③   ERの断片化は35℃よりも30℃で顕著である。

結論       脳海馬スライスの神経では、KCl刺激によるCa2+流入よって、ERが断片化する。

意見       今回のKCl刺激は生理学的な神経の脱分極と比べるとかなり強いため、通常の神経の脱分極ではどの程度ERが断片化するのか疑問である。Ca2+取り込み/放出チャネルを始めとしたER局在タンパク質はもともと均一に分布している訳ではないが、Ca2+に依存したERの断片化はさらなるタンパク質の局所化を引き起こすことになるだろう。どのような分子が、どのようにして可逆的なERの融合と分裂を担うのか、今後の研究で明らかになると面白いと思う。

ER 局在のp53 がCa2+に依存してアポトーシスを制御する (PNAS 2015年1月26日号掲載論文)

結論から言うと、
p53はERとミトコンドリアのコンタクトサイトに局在し、ER へのCa2+取り込みを促進する。Ca2+濃度が高くなったER は、MAM を通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される。以上の経路の存在が示唆された論文。

 

本日は「p53 at the endoplasmic reticulum regulates apoptosis in a Ca2+-dependent manner (小胞体のp53はCa2+依存的にアポトーシスを制御する)」という論文で、イタリア Department of Morphology, Surgery and Experimental Medicine, Section of Pathology, Oncology and Experimental Biology, University of Ferrara の Paolo Pinton のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

  

 ちょっと構造に分けて説明していきます。

背景       p53はミトコンドリアを介してアポトーシスを誘導することが知られていた。

課題       p53がどのようにしてアポトーシスを誘導するのか、詳細な分子機構の理解は完全ではない。

結果①   p53が小胞体とミトコンドリアのコンタクトサイト(MAM; mitochondria-associated membranesの略)に局在する。

結果②   p53が活性化するとER内へのCa2+取り込みが促進する。

結果③   ER上のp53はミトコンドリア内Ca2+濃度を上昇させ、アポトーシスを誘導する。

結果④   p53はER上のSARCA(ERにCa2+を取り込むポンプ)に直接結合して、SARCAの酸化還元状態を変化させる。

考察       以上の結果を合わせ、Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される、という経路の存在が示唆された。

結論       p53はERとミトコンドリアのコンタクトサイトに局在し、ERへのCa2+取り込みを促進する。Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される。以上の経路の存在が示唆された。

意見       p53は転写因子としてよく知られているが、核に移行せずともアポトーシス誘導することができるという報告だった。どこまで多機能なのか。 

 

興味を持たれた方はabstractもどうぞ。

The tumor suppressor p53 is a key protein in preventing cell transformation and tumor progression. Activated by a variety of stimuli, p53 regulates cell-cycle arrest and apoptosis. Along with its well-documented transcriptional control over cell-death programs within the nucleus, p53 exerts crucial although still poorly understood functions in the cytoplasm, directly modulating the apoptotic response at the mitochondrial level. Calcium (Ca2+) transfer between the endoplasmic reticulum (ER) and mitochondria represents a critical signal in the induction of apoptosis. However, the mechanism controlling this flux in response to stress stimuli remains largely unknown. Here we show that, in the cytoplasm, WT p53 localizes at the ER and at specialized contact domains between the ER and mitochondria (mitochondria-associated membranes). We demonstrate that, upon stress stimuli, WT p53 accumulates at these sites and modulates Ca2+ homeostasis. Mechanistically, upon activation, WT p53 directly binds to the sarco/ER Ca2+-ATPase (SERCA) pump at the ER, changing its oxidative state and thus leading to an increased Ca2+ load, followed by an enhanced transfer to mitochondria. The consequent mitochondrial Ca2+ overload causes in turn alterations in the morphology of this organelle and induction of apoptosis. Pharmacological inactivation of WT p53 or naturally occurring p53 missense mutants inhibits SERCA pump activity at the ER, leading to a reduction of the Ca2+ signaling from the ER to mitochondria. These findings define a critical nonnuclear function of p53 in regulating Ca2+ signal-dependent apoptosis.

(私訳と勝手な注釈) 

腫瘍抑制因子p53は、細胞の癌化や腫瘍の進行を抑制するための重要なタンパク質です。様々な刺激によって活性化されたp53は、細胞周期停止とアポトーシスを制御する。核内での細胞死プログラムを制御する転写制御に加えて、p53は細胞質においても重要な機能を発揮し、ミトコンドリアレベルでのアポトーシス応答を直接調節していますが、その機構はまだ十分に理解されていません。小胞体とミトコンドリア間のカルシウム(Ca2+)移動は、アポトーシスの誘導において重要なシグナルである。しかし、ストレス刺激に応答してこのフラックスを制御するメカニズムはほとんど不明である。本研究では、WT p53が細胞質において、小胞体とミトコンドリアの間の特殊な接触領域(ミトコンドリア関連膜)に局在することを示した。本研究では、WT p53がストレス刺激を受けると、これらの部位に蓄積し、Ca2+の恒常性を調節することを明らかにした。また、WT p53は活性化されると、ERのサルコ/ER Ca2+-ATPase(SERCA)ポンプに直接結合し、その酸化状態を変化させてCa2+負荷を増加させ、その後ミトコンドリアへの移行を促進することを明らかにした。その結果、ミトコンドリアのCa2+負荷が増加し、ミトコンドリアの形態が変化し、アポトーシスが誘導された。WT p53または天然に存在するp53ミスセンス変異体を薬理学的に不活性化すると、ERでのSERCAポンプ活性が阻害され、ERからミトコンドリアへのCa2+シグナル伝達が低下することがわかった。これらの知見は、Ca2+シグナルに依存したアポトーシスの制御において、p53の非核機能が重要な役割を果たしていることを示している。

*1:このグループはCa2+のダイナミクスを分子細胞レベルで研究しているラボのようです。 --The laboratory has developed avouched competences in the studying of calcium (Ca2+) homeostasis, in particular using recombinant proteins such as the Ca2+-sensitive photoprotein aequorins, the mutants of Green Fluorescent Protein (GFP) and different chemical probes. Moreover, we operate as center for cell imaging with particular interest in mitochondrial and Protein Kinase C (PKC) imaging. Finally, the group is involved in the study of adipocytes differentiation of stem cells population derived from different adult tissues. -- http://sm.unife.it/it/ricerca-e-terza-missione/ricerca-1/ambiti/signaltransductionlab/researchより。

*2:https://www.pnas.org/content/112/6/1779.long 

DNA 損傷により滑面小胞体が増加, ER-mito 間MCS の形成強化, アポトーシスにつながる (Cell Research 2018年7月20日号掲載論文)

結論から言うと、
DNA 損傷によりp53 が活性化すると、REEP1/2 の発現上昇による滑面小胞体の増加、EI24 の発現上昇によるER-ミトコンドリア間MCS の形成促進が誘導される。その結果ER からミトコンドリアへのCa2+移動が促進されアポトーシスが誘導される、ということを示した論文。

 

本日は「DNA damage triggers tubular endoplasmic reticulum extension to promote apoptosis by facilitating ER-mitochondria signaling (DNA損傷は滑面小胞体の伸長を誘発し、ER-ミトコンドリアシグナル伝達を促進してアポトーシスを促進する。)」という論文で、中国 Key Laboratory of Cell Proliferation and Differentiation of the Ministry of Education, State Key Laboratory of Membrane Biology, College of Life Sciences, Peking University(北京大学) の Jianguo Chen のグループによる研究。(論文サイトへのlink→*1

  

 ちょっと構造に分けて説明していきます。

背景       p53はミトコンドリアを介してアポトーシスを誘導することが知られていた。

課題       p53がどのようにしてアポトーシスを誘導するのか、詳細な分子機構の理解は完全ではない。

結果①   p53が小胞体とミトコンドリアのコンタクトサイト(MAM; mitochondria-associated membranesの略)に局在する。

結果②   p53が活性化するとER内へのCa2+取り込みが促進する。

結果③   ER上のp53はミトコンドリア内Ca2+濃度を上昇させ、アポトーシスを誘導する。

結果④   p53はER上のSARCA(ERにCa2+を取り込むポンプ)に直接結合して、SARCAの酸化還元状態を変化させる。

考察       以上の結果を合わせ、Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される、という経路の存在が示唆された。

結論       p53はERとミトコンドリアのコンタクトサイトに局在し、ERへのCa2+取り込みを促進する。Ca2+濃度が高くなったERは、MAMを通してミトコンドリアにCa2+を伝達し、ミトコンドリア内のCa2+が過剰になる。これによりアポトーシスが誘導される。以上の経路の存在が示唆された。

意見       p53は転写因子としてよく知られているが、核に移行せずともアポトーシス誘導することができるという報告だった。どこまで多機能なのか。 

翻訳と無関係にmRNAがERに局在化する (Plos Biology 2012年5月29日号掲載論文)

結論から言うと、mRNA がリボソームに依存せずにER 局在化する経路が存在し、このプロセスにはp180 というタンパク質が必要であることを示した論文。

 

本日は「p180 Promotes the Ribosome-Independent Localization of a Subset of mRNA to the Endoplasmic Reticulum (p180はリボソームに依存しない小胞体へのmRNAの局在化を促進する)」という論文で、カナダ Department of Biochemistry, University of Toronto の Andrea Daga のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

  

 ちょっと構造に分けて説明していきます。

背景       分泌タンパク質や膜結合タンパク質をコードするmRNAの大部分が小胞体(ER)表面(内腔ではないことに注意)で翻訳されている。これらのmRNAの小胞体表面へのターゲティングはシグナル配列によって行われ、その維持はリボソームとトランスロコンの相互作用によって行われる。一方で近年、さらなる別の経路(以下alternative pathway)でmRNAが小胞体に局在化することが明らかになってきている。

課題       alternative pathwayがどのような機構でmRNAをERに局在化するのか不明である。

目的       alternative pathwayに関与するタンパク質を同定し、その機構を解明する。

方法       ER画分からラフER(ポリソームをよく含む)画分を分離し、そのラフER画分にRNAse A処理をしたとき上清に来るタンパク質の質量分析を行う。「ラフERに存在しながら、インタクトなRNAが存在しないと同じ画分に落ちてこないタンパク質群」=「ラフER においてリボソームと独立してRNAに結合するタンパク質」を含む、という仮説にもとづく。

結果①   リボソームや翻訳とは無関係にERに標的化され、ERに局在したままであるmRNAが存在する。

結果②   質量分析の結果、このプロセスに関与しているであろうmRNA結合タンパク質; p180を同定した。(p180はもともとERの膜タンパク質として知られていた。リボソームとも相互作用する)

結果③   p180にはリジンに富んだ領域があり、RNAと直接相互作用できることをin vitroで示した。

結果④   p180のKDにより、p180がバルクmRNAのpoly Aの効率的なERへのアンカーリングに必要である(poly Aを標識したFISHでERとの共局在を見ただけなので、poly Aとp180が結合しているかは不明)ことと、placental alkaline phosphataseやカルレティキュリンなどの特定のmRNAのERへのアンカーリングに必要であることを示した

考察       このalternative pathwayは、1)タンパク質選別の正確性を高める、2)mRNAをERの様々なサブドメインに局在させる、という意義があるかもしれない。

結論       mRNAがリボソームに依存せずにER局在化するalternative pathwayが存在し、このプロセスにはp180が必要である。

意見       リボソームが来る前にmRNAをERに局在させることができれば、局所的な翻訳効率が上がりそうだが、そのようなプロセスが必要な生理的条件があるのか疑問が残った。 

 

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Fig. 1C. poly AのFISH. puromycin+EDTAで翻訳の阻害/homoharringtonine (HTT)で翻訳の開始の阻害をしても、mRNAがERに局在する(ERマーカーとの共局在まで見るべきとは思う。翻訳阻害をしていない条件でのERとmRNAの局在しか見ていなかった)。

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Fig. 8F. ALPPのFISH. HTTで翻訳開始を阻害しても、ALPP mRNAがERに局在する(cont)。それがp180のKDでキャンセルされる。

 

そのmRNAは、何のためにERを目指すのだろう? 

 

興味を持たれた方はabstractもどうぞ。

In metazoans, the majority of mRNAs coding for secreted and membrane-bound proteins are translated on the surface of the endoplasmic reticulum (ER). Although the targeting of these transcripts to the surface of the ER can be mediated by the translation of a signal sequence and their maintenance is mediated by interactions between the ribosome and the translocon, it is becoming increasingly clear that additional ER-localization pathways exist. Here we demonstrate that many of these mRNAs can be targeted to, and remain associated with, the ER independently of ribosomes and translation. Using a mass spectrometry analysis of proteins that associate with ER-bound polysomes, we identified putative mRNA receptors that may mediate this alternative mechanism, including p180, an abundant, positively charged membrane-bound protein. We demonstrate that p180 over-expression can enhance the association of generic mRNAs with the ER. We then show that p180 contains a lysine-rich region that can directly interact with RNA in vitro. Finally, we demonstrate that p180 is required for the efficient ER-anchoring of bulk poly(A) and of certain transcripts, such as placental alkaline phosphatase and calreticulin, to the ER. In summary, we provide, to our knowledge, the first mechanistic details for an alternative pathway to target and maintain mRNA at the ER. It is likely that this alternative pathway not only enhances the fidelity of protein sorting, but also localizes mRNAs to various subdomains of the ER and thus contributes to cellular organization.

(私訳と勝手な注釈) 

分泌タンパク質や膜結合タンパク質をコードするmRNAの大部分が小胞体(ER)表面で翻訳されている。これらのmRNAの小胞体表面へのターゲティングはシグナル配列によって行われ、その維持はリボソームとトランスロコンの相互作用によって行われる。一方で近年さらなる小胞体局在化経路が存在することが次第に明らかになってきている。ここでは、こういったmRNAの多くがリボソームや翻訳とは無関係にERに標的化され、ERに関連したままであることを示している。ERと結合したポリソームと結合するタンパク質の質量分析を用いて、このプロセスに関与しているであろうmRNA受容体を同定した。その中にはp180が含まれており、p180は正電荷を帯びている発現量の高いタンパク質である。我々は、p180の過剰発現が一般的なmRNAとERとの関連性を高めることを示した。さらに、p180には、RNAと直接相互作用することができるリジンに富んだ領域が含まれていることをin vitroで示した。最後に、p180がバルクポリ(A)の効率的なERへのアンカーリングと、placental alkaline phosphataseやカルレティキュリンなどの特定の転写物のERへのアンカーリングに必要であることを示した。以上のことから、我々は、mRNAを標的とし、ERで維持する経路の中でもnon-cannnonicalな経路のメカニズムの詳細を初めて明らかにした。このnon-cannnonicalな経路は、タンパク質選別の正確性を高めるだけでなく、mRNAをERの様々なサブドメインに局在させ、細胞の組織化に貢献している可能性がある。

*1:このグループはmRNAに主眼をおいていて、mRNAの核外への輸送, 適切なmRNAの局在, ERにおける翻訳と細胞質における翻訳の違い、等を研究しているラボのようです。 --1) How are mRNAs exported from the nucleus? 2) How are mRNAs localized to their proper subcellular destination, such as the endoplasmic reticulum? 3) How does mRNA translation in the cytosol differ from translation on the endoplasmic reticulum? -- http://biochemistry.utoronto.ca/person/alexander-f-palazzo/より。このトロント大学のbiochemistryのwebページがカッコよい!

*2:https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.1001336

Rtn1がERの分裂を担う (Nature Communications 2019年11月22日号掲載論文)

結論から言うと、レティキュロン (reticulon) というタンパク質によってダイナミックなER膜の収縮と分裂が起きていることを示した論文。

 

本日は「Dynamic constriction and fission of endoplasmic reticulum membranes by reticulon (レティキュロンによる小胞体膜の動的収縮と分裂)」という論文で、イタリア Scientific Institute, IRCCS E. Medea, Laboratory of Molecular Biology の Andrea Daga のグループ(どういったラボ?→*1)による研究。(論文サイトへのlink→*2

 

 

ERの大きさが、reticulonの分裂とatlastinによる融合のバランスによって動的に制御されている、という点が勉強になりました。

reticulonとatlastinは、それぞれ何によって活性を得たり失ったりするのでしょうかね。(例えば、ある生理的な条件でERが断片化する場合、reticulonが高い活性を持つようになる and/or atlastinの活性が失われる、という反応が起きているのでしょうか?)

 

興味を持たれた方はabstractもどうぞ。

The endoplasmic reticulum (ER) is a continuous cell-wide membrane network. Network formation has been associated with proteins producing membrane curvature and fusion, such as reticulons and atlastin. Regulated network fragmentation, occurring in different physiological contexts, is less understood. Here we find that the ER has an embedded fragmentation mechanism based upon the ability of reticulon to produce fission of elongating network branches. In Drosophila, Rtnl1-facilitated fission is counterbalanced by atlastin-driven fusion, with the prevalence of Rtnl1 leading to ER fragmentation. Ectopic expression of Drosophila reticulon in COS-7 cells reveals individual fission events in dynamic ER tubules. Consistently, in vitro analyses show that reticulon produces velocity-dependent constriction of lipid nanotubes leading to stochastic fission via a hemifission mechanism. Fission occurs at elongation rates and pulling force ranges intrinsic to the ER, thus suggesting a principle whereby the dynamic balance between fusion and fission controlling organelle morphology depends on membrane motility.

(私訳と勝手な注釈) 

小胞体は、細胞全体の連続的な膜ネットワークである。小胞体ネットワークの形成には、膜の湾曲 (curvature) や融合を作り出すタンパク質、例えばレティキュロンやアトラスチンなどが関与しています。しかし、様々な生理的状況下で発生するネットワークの断片化については、あまり理解されていませんでした。ここでは、ERのネットワーク分岐 (elongating network branches) をレティキュロンによって分裂するメカニズムが存在することを発見した。ショウジョウバエを用いた実験では、Rtnl1が促進するER分裂は、アトラスチンによるER融合によって相殺され、Rtnl1の方が優勢になるとERの断片化が生じた。COS-7細胞にショウジョウバエのレティキュロンの異所性発現をすると、ダイナミックなER tubules における個々の分裂イベントが可視化された。そのことと一貫して、in vitroでの解析により、レティキュロンは脂質ナノチューブの速度依存性の収縮を生じ、ヘミフィッション機構を介して確率的な分裂を引き起こすことが示されている。ERが持つ伸長速度と引張り力の範囲でER分裂が起こる。(*最後のin vitro解析の結果は、光ピンセットを用いた引張力の測定や数式によるkeneticsのモデリング等があり、正直あまりフォローできていません。)このことから、膜の運動性に依存した融合と分裂のダイナミックな均衡状態がオルガネラの形態を制御するという原理が示唆された。

*1:このグループはショウジョウバエを用いてERやMicrotubulesのダイナミクスを研究しているラボのようです。atlastinというタンパク質がERの融合を担っていることを報告したのもこちらのラボからです。 --https://moh-it.pure.elsevier.com/en/persons/andrea-daga より

*2:https://www.nature.com/articles/s41467-019-13327-7#Sec27

今週見た中で面白そうな論文(2020年5月第1週)

5月1日から5月10日の間で読んだ/積読したおもしろそうな論文のメモ。

 

 

 

Hexokinase 2 displacement from mitochondria-associated membranes prompts Ca2+ -dependent death of cancer cells. - PubMed - NCBI

 

FBP1 loss disrupts liver metabolism and promotes tumorigenesis through a hepatic stellate cell senescence secretome | Nature Cell Biology

 

Unfolded Protein Response (UPR) Controls Major Senescence Hallmarks - ScienceDirect