E-SytsによるER-PM間MCSの形成にはCaイオンが必要である (The EMBO Journal 2015年7月22日号掲載論文)

 結論から言うと、E-SytsE-SytsがER-PM間をテザリングするにはCaイオンが必要であることを示した論文。

 

本日は「Triggered Ca2+ influx is required for extended synaptotagmin 1‐induced ER‐plasma membrane tethering (extendedシナプトタグミン1によるER-PM間テザリングには、Ca2+流入が引き起こされることが必要である)」という論文で、米国 Department of Cell Biology, Yale University School of Medicine の Dr. Pietro De Camilli のグループによる研究。(論文サイトへのlink→*1

 

 

ER膜と細胞膜の接触部位(ER-PM間MCS) で、テザリング分子として機能するExtendedシナプトタグミン(E-Syt)のお話です。このシナプトタグミン、及びE-SytがCaイオンと結合し、その機能が制御されていることは既知でしたが、それがテザリング分子としての機能にも大事なのか?という問いを検証した論文です。

どうやらERから放出されるCaイオンだけでは十分ではなく、細胞外から流入するカルシウムイオンが大切みたいです。

 

ちょっと気になったのですが、

細胞全体としてカルシウム過剰な状態で、ER-PMをつないで脂質を交換する必要があるのでしょうか?

それとも、

細胞全体としてはカルシウム欠乏なんだけれども、局所的にカルシウム濃度を上昇させてER-PMをつなぎ、そこからSOCEで直接ERにカルシウムを補充しているのでしょうか?

また読んだら追記します!

https://www.embopress.org/cms/attachment/f33644d3-44fb-43fe-8cae-ac74d2a3d948/embj201591565-abs-0001-m.jpg

論文のサイトより引用

 

興味を持たれた方はabstractもどうぞ。

The extended synaptotagmins (E‐Syts) are ER proteins that act as Ca2+‐regulated tethers between the ER and the plasma membrane (PM) and have a putative role in lipid transport between the two membranes. Ca2+ regulation of their tethering function, as well as the interplay of their different domains in such function, remains poorly understood. By exposing semi‐intact cells to buffers of variable Ca2+ concentrations, we found that binding of E‐Syt1 to the PI(4,5)P2‐rich PM critically requires its C2C and C2E domains and that the EC50 of such binding is in the low micromolar Ca2+ range. Accordingly, E‐Syt1 accumulation at ER‐PM contact sites occurred only upon experimental manipulations known to achieve these levels of Ca2+ via its influx from the extracellular medium, such as store‐operated Ca2+ entry in fibroblasts and membrane depolarization in β‐cells. We also show that in spite of their very different physiological functions, membrane tethering by E‐Syt1 (ER to PM) and by synaptotagmin (secretory vesicles to PM) undergo a similar regulation by plasma membrane lipids and cytosolic Ca2+.

(私訳と勝手な注釈) 

extendedシナプトタグミン(E-Syts)は、ERと細胞膜(PM)の間のMCSにおいて、Ca2+により制御されるテザリング分子として作用するERタンパク質であり、2つの膜間における脂質輸送の役割を担うとされています。それらのテザリング機能によるCa 2+調節、およびMCSにおける異なるドメイン同士の相互作用は、よく理解されていないままです。semi-intactな細胞をさまざまなCa2+イオン濃度のバッファーにさらすと、PI(4,5)P2が多いPMへのE-Syt1の結合には、E-Syt1のC2CおよびC2Eドメインが必須であり、そのような結合におけるCa2+イオンの50%効果濃度(薬物や抗体などが最低値からの最大反応の50%を示す濃度のこと)はマイクロモラー弱の範囲でした。したがって、ER-PM接触部位でのE-Syt1の蓄積は、線維芽細胞でのストア作動性Ca2+流入やβ細胞での膜脱分極など、細胞外培地からの流入を介してCa2+レベルが上昇することが知られている実験操作でのみ誘導されました。また、生理学的機能が非常に異なるにもかかわらず、E-Syt1(ER-PM間MCS)およびシナプトタグミン(PM-分泌小胞間MCS)による膜テザリングが、PM脂質の構成および細胞質Ca2+に依存して似たような調節を受けることも示しています。

ちなみに、
このグループからの論文は、佐伯恭範先生が新着論文レビューに投稿されていて、非常にわかりやすかったです。

extendedシナプトタグミンが、cytocolic CaイオンとPI(4,5)P2依存的にPM-ERのMCSを形成することを示した。(2013)
first.lifesciencedb.jp

extendedシナプトタグミン(E-Syt)欠損株では、DAGがPMに蓄積。E-SytがPMからERにDAGを輸送することで、PMの脂質恒常性を保っていることを示唆。(*PI(4,5)P2のPLCによる分解→IP3+DAG(ジアシルグリセロール))(2016)
first.lifesciencedb.jp